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中近東FAQ目次


レバノン国境に近いイスラエル北部に布陣し,
レバノン南部のイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの根拠地を砲撃する,
イスラエル軍の155mm砲(AFP=時事)
20006年7月17日17時52分


 【質問】
 リタニ川って「天然の要害」になりえるの?

 【回答】
 リタニ川は,西岸が台地になっていて,そこを過ぎると西に大きく流れを変える場所がある.
 アルノウンは台地上の小さな村のようだ.

 地図で見るとリタニ川の川幅は狭い.数十メートルじゃないかな?
 簡単な架橋機材で突破できるし,浅いところがあれば徒歩でも渡れるんじゃないか.

 あと,レバノンのような地中海性気候では,夏の降水量はゼロに近い.
 河川というより溝程度の地形障壁にしかならんと思われ.

軍事板


 【質問】
 イスラエル軍はどんな戦術を使ってるの?

 【回答】
 現在のイスラエル軍のやってることは,懐かしのエアランドバトル戦術の延長.
 最前線は上空をぐーるぐるの航空支援+砲兵で正面兵力磨り潰し,後方の輸送路を爆撃で破壊して兵力移動阻止.
 司令部にも爆撃して,可能ならヘリボーン.

軍事板


 【質問】
 今回,メルカヴァ戦車が大きな損害を出したってホント?

 【回答】
 ホント.ロシア製ATM「メチスM」でボコられた.
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-3290185,00.html

Anti-tank missiles were a key tool used against the IDF, claiming lives of soldiers.
*Three fighters of the Armor Corps 'Battalion 9 were killed after an anti-tank missile hit a Merkava tank in which they were riding in Wadi Sluki on the eastern region.........
(以下,土曜日の戦車被害が並んでるけど多すぎるので省略.)

 また,分析記事も出ている.

ATGMと戦車の対決が現実に(2006年8月28日)

 レバノンでの地上戦闘では史上初めて現代の最新戦車に対しての大規模な最新ATGM(対戦車ミサイル)の使用が確認された.
 ヒズボラは合計でおよそ500発のATGMを発射し,50台ほどのイスラエル軍装甲戦闘車両(※戦車や重装甲兵員輸送車)に命中させた.
 全てのATGMが装甲戦闘車両を狙った物ではなく,およそ3分の1は明らかにイスラエル軍歩兵に対して使用された.
 しかし,イスラエル軍の死傷者のうち半分は,ATGMの命中を受けた50台ほどの装甲戦闘車両の乗員であった.車両以外の標的に対して発射されたATGMによる死傷者は10%に過ぎない.
 イスラエル軍は今回のレバノン侵攻作戦で116人の死者と500人を超える負傷者を出した.軽傷を負った兵士の数はこの中に含まれていない.
 50台の車両が命中を受け58名が死亡したという割合は,たとえ以前よりは死傷率が低下している傾向はあるものの,それでも過去の戦闘の例からみても相反しないものである.

 (50台ほどのの)ATGMの命中を受けた車両のうち60%はメルカバ戦車で,そのうち3分の1は完全に破壊されるかひどく損傷した.ただし損傷した戦車は回収され,修理された.
 この原因はヒズボラが1970年代の設計からから最新の物,特に9M133コーネット(アメリカ製のジャベリン対戦車ミサイルに似ている)まで,いくつかのロシア製ATGMを使用したためだ.
 ヒズボラは,よく訓練された200人ほどのATGM操作兵を保有しており,彼らは大規模に最新ATGMを使用したが,(結果をフェアに観察すれば,)ATGMは装甲戦闘車両を一気に陳腐化させる魔法の兵器だ,という言説は未だ正しくないことを証明した.
 イスラエル軍は1000両以上の装甲戦闘車両をレバノンに展開し,およそ5%の車両がATGMの命中を受けた.
 しかしATGMはイスラエル軍を止めることは出来ず,進撃を遅滞することもできなかったのだ.

http://www.strategypage.com/htmw/htarm/articles/20060828.aspx

 メルカバの損害は「一日2輌平均」という報道もあるが,IDF側は30輌強と言っているらしい.
 一説には攻撃を受けて損傷したものは100輌を超えていると言われる(その後回収され復活分もあるからすべてが全損ではないだろう)

 外国メディアだけど,装甲ブルドーザーが攻撃されて,その中の乗員を救助するためにメルカバが投入されたが,対戦車ミサイルで破壊され乗員は両足切断,
 一晩放置後,別のメルカバに回収された,ってレポートがあったよ.

軍事板

ヒズボラ,強力な対戦車ミサイルで抵抗=イスラエル軍に大きな誤算 [AFP=時事]

【エルサレム10日】軍事筋によると,レバノン南部でのイスラエル軍との戦闘で,イスラム教シーア派武装組織ヒズボラはロシア,イラン製の強力な対戦車ミサイルを極めて効果的に使っている.
 戦闘開始以来,レバノン南部で死亡した68人のイスラエル軍兵士の多くは,これらのミサイルの犠牲となっている.
 イスラエル紙イディオト・アハロノトは10日,ヒズボラが発射した25発の対戦車ミサイルのうち,4分の1が目標となった戦車の装甲を突き破り,大きな損害を与えたと報じた.
 イスラエル軍のメルカバIII,IV戦車は世界有数の頑強な装甲と防御システムを持つとの評判を取っており,このことはイスラエル軍の誇りに大きな打撃を与えている.
 イスラエル軍はまた,ヒズボラがよく訓練されており,戦車の非常に近距離からミサイルを発射するなど,その抵抗のレベルの高さにも驚かされている.
 戦略研究の専門家は,ヒズボラの対戦車ミサイルの多くは,ロシア製もしくはイランで製造されたロシアモデルだと指摘する.
 同氏によると,最も強力なミサイルはメティスMとコルネット.両ミサイルはロシアによって製造され,1990年代にシリアに引き渡された.近代戦車の装甲を貫通させることを主眼に設計された,強力な破壊力を持つミサイルだという.
 ヒズボラはまた,イランで製造されたロシアの最新型のマリュートカ・ミサイルやロシア製のファゴット・ミサイルも入手している.
 これらの対戦車ミサイルは1メートルもの厚さの装甲を貫通し,1・5−5キロの射程距離を有するという.
 同専門家は,イスラエル軍はヒズボラが大量のミサイルを持っていることは承知していたが,メティスMやコルネットまで所有していることは知らなかったのではないかと指摘している.

時事通信, 2006/8/11

 反応装甲で戦車が優位に立ったと思ったが,最新のタンデム弾頭やトップアタックのATMが優位に立ったみたいだな.
 自衛隊も小隊で84mm無反動砲の代替の01式トップアタックATMを年間200セット装備中だから,かなりの対戦車戦力を保有している.
 実戦でどれだけの威力があるのか見てみたい.

 リアクティブアーマーの限界ももうだいぶ前から言われていて,リアクティブアーマーを使わない強化策というものがとられていた.
 侵攻前にはそれでだいぶ良くなったという話をイスラエルがしていたが,ヒズボラはさらに新しいミサイルを導入したりしたのだろう.

 どっちにせよ20発以上のミサイルをひとつの戦車に打ち込むような事もするし,後ろや上からミサイルを打ち込まれると戦車が弱いのは変わりがない.

 中東戦争の歴史を見ても,イスラエルの機甲師団が対戦車ロケットを持ったアラブ兵にやられまくった歴史はある.
 イスラエル軍は常に百戦百勝だった訳じゃない.
 イスラエルの戦闘機がアラブの対空機関砲や対空ミサイルで撃墜されまくったこともあったしな.
 兵器も戦術,戦略もドンドン進歩してるのだから,一瞬の油断で形勢はあっという間に逆転する.

軍事板

 ちなみに,ロシアの専門家は,
「メルカバを援護するヘリ部隊がないんじゃ,メルカバの乗員は側面や後方で何が起こっているのか分からないんだから,これじゃ,ゲリラのいいカモじゃん」
と,IDFの戦術の稚拙さをあげつらっている.

 以下引用.

――――――
 記者質問「ヒズボラがロシア製のRPG-29を使ってわれわれは損害を受けている,とイスラエルがロシアに抗議してきましたが?」
 匿名を条件に回答するロシア軍専門家「RPG-29はたしかにロシア製の兵器ですが,東欧諸国にも配備されているし現地生産もあります.弾体の破片にロシア語が書いてあるからといって証拠にはならない.確たる証拠もないのにガタガタ言われても困る.」
「戦争に負けるとロシア軍が武器を供給しているせいだと言う,ベトナム戦争のときにもそういうことがありました.政治家が自分たちの軍隊や武器の無力を認めたがらないからです.」
「今回の戦闘でメルカバを援護するヘリ部隊はありません.メルカバの乗員は周囲がほとんど見えず,側面や後方で何が起こっているのかわかりません.
 これではゲリラ兵士のよいカモです
「ゲリラは何も正面からメルカバを攻撃する必要はありません.確かに正面はよく防御されていますが,側面や後部,転輪の間から攻撃すれば良いのです.
 どんな戦車も弱点を持っており,完全な兵器は存在しません.
 ならば,なぜロシアのロケットランチャーに文句を言うのですか.」
「メルカバはイスラエル製の兵器ですが,M113や武装へり,爆撃機,戦闘機はアメリカ製です.外国の兵器で外国の領土を攻撃しているものが,どうして誰かを非難するのですか.」

――――――ノーボスチ通信,2006/8/11翻訳:軍事板

 また,ミサイルの他に「RPG-29」がヒズボラの手にあるようです
 これは600 mm RHAの貫通能力を誇り,タンデム弾頭なのでERA装甲も貫通します.

CRS in mixi支隊

 2005/11/29 に発生したヒズボラとの戦闘で,RPG-29 が使われていたようですね.
 イスラエルは昨年末か今年初め頃から,ヒズボラが RPG-29 や Metis-M をロシアから入手していると非難していたのですが,ロシア側は「わーたーしーはー売ってないー,潔白だー」と否定していた由.

井上@Kojii.net in mixi支隊

kojiiさんのところの記事

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http://www.kojii.net/news/news060825.html
第四次中東戦争の再来(か?)(JDW2006/8/16)

 〔略〕

 最初の1ヶ月で,イスラエル軍の機甲科が出した死者は13名.この間に,Hizbullahは500発を超える対戦車ミサイルを発射,40両の戦車に命中して,そのうち10両が装甲板を貫通されたとしている.
 こうした状況の中で,MerkavaMk.4戦車にRafael社のAPS(Active Protection System)・Trophyを搭載しなかったことを「判断ミス」と非難する声が,上層部からも現場からもあがっている.
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 正確な被害や戦訓のレポートはArmor誌あたりに載るんだろうけど,入手は難しいよねぇ.

軍事板

 「軍事研究」11月号にイスラエルのヒズボラ掃討戦のレポートがあり,その中にメルカバ戦車の損害関連が載っていました.
 そのレポートによると,今回の作戦で撃破されたメルカバはメルカバMkU・メルカバMkUD(ドル・ダレッド)で ,新型のMkV・MkWは20輌が被弾したそうですが,撃破されておらず,最新型で実戦初投入となるMkWは,ATMの直撃を受けながらも装甲貫通無しという結果を残しているそうです.

 また,同誌のメルカヴァ特集によると,メルカバMk2からMk2Bに改修されたのは,1997年の秋にメルカバMk2が「スピゴッドミサイル」に装甲貫徹されまくった,特に操縦席上部が貫徹されたためで,これまで成型炸薬弾には無敵だったようですが,1990年代の終わりまでにヒズボラはタンデム弾頭を装備した近代的対戦車ミサイルを入手してた模様です.

CRS in mixi支隊

 予備役兵の訓練予算すら削減しているくらいなので,これも装備をケチったのだろうけど,この吝嗇は結局,高くついたねえ.
 情報不足のせいもあるんだろうが,何に予算を優先配分しなければならないのかを,もう一度見直すべきだろう.

 【関連動画】

イスラエル戦車兵が語るドキュメンタリー.
 メルカバMk2(?)が撃破される映像も .

Anti-tank weapons of Hezbollah
 サガーやスピゴットはまだわかるがAT-14 Kornetを何故か入手しているヒズボラ万歳.
 TOWは何所から流れてきたんだろうか?
 話題のRPG-29もありますよ.
 こんな大量の対戦車火器があるとは思ってもみなかったイスラエル涙目.
―――CRS@空挺軍 in mixi,2007年10月22日20:37

 最新版が投稿されておりまして,主砲にミサイルが命中し千切れた状態で走行するメルカバMK4やそのレポートも掲載.
 また,TOW対戦車ミサイルを運搬する専用運搬車が捕獲されている写真が載っておりました.

 組織的な対戦車戦術と後方支援能力は侮れませんね.
―――CRS@空挺軍 in mixi,2007年11月14日21:32

「ワレYouTube発見セリ」:ヒズボラ対メルカヴァ

メティスM

 RPG-29関連.&「なんでこんなものが・・・」と頭を痛めるイスラエル兵士.


 ヒズボラの攻撃をうけて炎上するメルカバ

 続いて,IEDにやられるメルカバと,「こんなはずじゃなかった」と言いたげなイスラエル戦車兵


CRS in mixi支隊


 【質問】
 kojiiさんのところの記事
http://www.kojii.net/news/news060825.html
第四次中東戦争の再来(か?)(JDW,2006/8/16)

 Hizbullahがイスラエル軍に大きな損害を与えている理由は,イランやシリアから入手したとみられる対戦車ミサイル.
 このうち,シリア・ルートで入手したとみられているロシア製対戦車ミサイルには,9P133Kornet-E,9M131Metis-M,9K113Konkurs(AT-5Spandrel),9K111Fagot(AT-4Spigot)がある.
 一方,イラン製の対戦車ミサイルとしては,イランが製造している9K113Konkursと,Towsan-1/M113Raad(9K11Malyutka/AT-3Saggerの改良版)がある.

 最初の1ヶ月で,イスラエル軍の機甲科が出した死者は13名.この間に,Hizbullahは500発を超える対戦車ミサイルを発射,40両の戦車に命中して,そのうち10両が装甲板を貫通されたとしている.

によれば,ヒズボラが使用した対戦車ミサイルの数に対して,撃破されたイスラエルの戦車の数は四分の一程度だそうですが,対戦車ミサイルはどうやって回避されるのでしょうか?
 それとも,命中しても撃破できないということがあるのでしょうか?

 【回答】
 当てるには訓練が要るし,それにはシミュレーターや高価な実弾が要る.
 訓練ができても実戦で冷静に撃つことは難しい.
 当たってもHEATなのでERAなどに弱い.
 イスラエルは,空間装甲から鎖のカーテンからERAからあらゆるHEAT防御(RPGも多いし)をしてる.

 ATM(対戦車ミサイル)と言ってもいろいろあるので,状況も様々だが,例えばレーザー誘導のものの場合は発射後も射手が標的をロックし続けなければいけない.
 これが何らかの要素によって妨害されれば当然,ミサイルは明後日の方に飛んでいく可能性が高い.
 赤外線誘導でも他の熱源に突っ込んだり,戦車の発煙筒の炎に欺瞞されたりすることもある.

 当然ミサイル側も外さない,外れないようにいろいろ工夫は進んでいるが,そのあたりはイタチごっこでもあるなぁ.

軍事板

 それと,1輌に複数撃込んだ例が多いです.
 というかマニュアルにあるですよ.携行対戦車兵器は,戦車に対しては数発を撃込むのが基本です.
 50輌に被弾させて死者が60名弱,といったあたりで,効果の程も知れますね.

対潜臼砲◆hwarUfzQJI in 軍事板

 追加情報.
 撃破されたイスラエルの戦車の数に関する続報ですが,IDFがまとめた数字によると,対戦車ミサイルで破壊された(detroyed)のが14両,地雷で破壊されたのが6両.
 さっそく,Rafael社に対してTrophyアクティブ自衛システムの量産準備をするように,との指示が出た由.

井上@Kojii.net in mixi支隊

IDFに捕獲されたTOW専用運搬車


CRS@空挺軍 in mixi,2007年11月14日21:32


 【質問】
 レバノンでF-15がついに撃墜されたって本当?

レバノン上空でイスラエル軍機が撃墜か

 中東・レバノンのテレビ局は17日,上空から炎上する物体が落下する映像を放送し,レバノン上空でイスラエル軍の戦闘機が撃墜されたと報じた.
 イスラエル軍はこれを否定している.
 〔略〕

NNN,2006/7/18

 【回答】
 2006/07/18(火)のNHK・BSニュースによれは,例のF-16 or UAVと思われていたのはロケット弾の暴発と判明した模様.
 ロケット弾搭載の車両をイスラエル軍が攻撃,撃破したら,ロケット弾一発に点火して飛び出し,直後に例の映像の状態になって落下……だそうだ
 鮮明な映像の白煙の軌跡と落下映像からも,F-16やUAVと違う物と判断できる.
 長い物体だからロケット弾以外の物の可能性はない.
 これがイラン製の件の長距離ロケット弾だそうだ.


 【質問】
 イスラエル空軍が一般住宅や都市インフラを攻撃しているのは国際法違反じゃないの?

 【回答】
 民間施設でも軍事目的に利用されてれば軍事目標と認定される.
 第2次大戦中の都市爆撃だって,ジュネーブ条約147条の示す『軍事的必要性』という理屈で法的に正当化されてるんだし.
 ヒヅボラは,IDFが撮ったビデオにもあるとおり,住宅街やオフィス街からロケット弾を撃っているから,その拠点を叩くことは防衛上仕方ない.

 また,補給路として機能してる各種インフラ及び,ヒズボラの指揮命令施設に電力を供給してる発電施設への攻撃も,法的に問題ない.

軍事板


 【質問】
 「イスラエルによる空爆の被害」写真の一部に捏造があったそうですが,例えばどんな捏造があったのですか?

 【回答】
 例えば,こんなぁゃしぃ写真が.

 ある写真では "死体" になっている人が,別の写真では元気に消火活動に参加していたり,他の写真でかぶっている帽子を "死体" が脇に挟んでいたり,というツッコミ.
http://gatewaypundit.blogspot.com/2006/08/new-york-times-busted-in-hezbollah.html

 「銃を構えた Hizbullah 兵士の後方で炎上しているのは,Hizbullah のトラックを攻撃しようとして撃墜されたイスラエル軍機の燃料だ」というキャプション.
http://hotair.com/wp/wp-content/uploads/2006/08/time-lebanon.jpg
http://hotair.com/wp/wp-content/uploads/2006/08/time-caption.jpg

 ところが「それって古タイヤの山が燃えてるだけじゃねえの ?」という指摘も.
http://www.flickr.com/photo_zoom.gne?id=210343595&size=l

井上@Kojii.net in mixi支隊


 【質問】
 レバノンにバラ撒かれた,クラスター爆弾の不発弾の数は?

 【回答】
■不発弾が復興の妨げに (8/21)
http://www.chunichi.co.jp/00/kok/20060821/mng_____kok_____000.shtml
>国連は投下された爆弾の1割に当たる8000−9000発が,
>不発弾として建物のがれきや地中に眠っている可能性を指摘しており

■クラスター不発弾10万 (9/1)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-09-01/2006090107_02_0.html

■クラスターの不発弾,レバノンに最大110万発にも (9/19)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060919i214.htm

■レバノンに不発弾数十万発 除去に1年以上 国連調査(9/20)
http://www.asahi.com/international/update/0920/026.html
>子爆弾が644個搭載されたクラスター爆弾が少なくとも1800発使用され,
>子爆弾約116万個がレバノン南部にばらまかれたとみられる.
>国連はうち4割が爆発せずに不発弾として残っていると分析している.
----

■<不発弾>レバノン紛争で100万発 予想大幅に超える
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060920-00000135-mai-int

 何時の間にやら10倍,10倍ときて当初の予想の100倍になっています.
 MLRSのM26ロケット弾(子弾644個収納)を1800発放って116万発という計算.
 これは全て不発になった場合を想定して最大値を取っていると.

 ・・・国連は一体,どんな計算の仕方をしているんでしょう.
 1800発って,まさか去年アメリカに発注した量じゃ・・・どうだったかな.

JSF in mixi支隊

 イスラエル嫌いの国連のことだから,きっと,ドラえもんの4次元ポケットから「バイバイン」という薬を出して,それでネズミ算式に増やしてるんだよ.
 1ヶ月後には「イスラエル軍の不発クラスター爆弾」が,地球上を埋め尽くすぞ!


 【質問】

ウラン使い新型爆弾か レバノンでイスラエル軍 英紙報道爆撃跡から放射線

 ECRR関係者は初期分析の結果,イスラエルが使用したのは
(1)小さな核分裂装置を伴う実験兵器
(2)劣化ウランの代わりに濃縮ウランを覆いの部分に使用した地中貫通型爆弾
――の可能性があるとしている.
西日本新聞,2006/10/29

 ・・・これ,どこから突っ込めばいいでしょうか?

JSF in mixi支隊

 【回答】
 とりあえず信管を抜いた穴から突っ込んでは如何でしょうか?
 何を突っ込むのかは言いますまい.

メッサー=ハルゼー in mixi支隊

 なんか,電波にマジレスするような感じで気が引けたりもしますが,善意に解釈すると以下のようになるかと思います.

 『欧州議会の決議に基づいて設置された「欧州放射線リスク委員会(ECRR)」』自体は,いくら何でも根拠のない推論はしないでしょうから,濃縮ウラン云々は英紙インディペンデントか共同通信社がまともな裏取りもせずに推測で書き飛ばしたのだろうと思われます.

 そもそも土壌サンプルがあるのでしたら,放射線の詳細分析で中に含まれる核種はすぐに分かりますし,それこそ核分裂したら核実験ではありませんが,短中半減期の核分裂生成物などで一発です.

 順当に考えれば,核分裂させる必要がなければ,濃縮ウランを使用すべき理由は全くなく,コストアップ以外の何者でもありませんので,天然ウランもしくは劣化ウランを弾体に使用したと考えるのが普通でしょう.
 仮に微量の核分裂生成物(もしくは天然ウランより高めのU-235)が検出された場合でも,イスラエルにはフランスからの技術導入による再処理施設(ディモナ)が存在するため,再処理により得られた回収ウランを使用した可能性が高いのではないでしょうか.
 なお,「イスラエルの原子力開発と原子力施設」については以下をご参照ください.
http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/14070301_1.html

へぼ担当 in mixi支隊

 ですよねぇ・・・

(1)小さな核分裂装置を伴う実験兵器

 これって核爆弾だし,

(2)劣化ウランの代わりに濃縮ウランを覆いの部分に使用した地中貫通型爆弾

 劣化ウランを使わない理由がわからない.そもそも「覆い」って・・・弾芯ではなく?

JSF in mixi支隊

 「劣化ウランを使わない理由」があるとすれば,自前でウランの濃縮を手がけていないため,濃縮ウランの副産物である「劣化ウランが手元にない」場合以外,普通には考えようがありません.
 米軍などで劣化ウランを使用しているのは,自前で濃縮を行い,副産物として発生する手持ち分がある訳で.

 最初はディモナの核施設でウラン濃縮も?と考えたのですが,正直手元の資料では完全な判断が付きません.
 まあ,民間ベースの資料で軍事施設分まで全ての情報が手に入る訳ではないでしょうが(特にイスラエルなら情報の秘匿が徹底していると思われるため).

 以下は一般論ですが,普通,原子力分野で「核燃料加工工場」というと,核燃料の加工成形が主であり,化学的な精製プロセス(転換・再転換など)を含むことがあっても(例:三菱原子燃料工業東海工場),核的な濃縮プロセスを含むことは稀という認識があります.
 ただ,軍事・研究用に小規模な施設を併設する可能性は否定できませんので,真相はよく分かりません.

 また,公開情報から考えると,

a)ソレク原子力研究センター(所在地:ヤフネ)
 アメリカ製のIRR−1(熱出力5MW,スイミングプール型,1960年6月臨界)

では,中・高濃縮ウランを使用している可能性が高いのですが,こちらのみIAEAの保障措置を受けており(一般にこの型の原子炉では,アメリカから核燃料の供給を受けるのが普通です),軍事転用は困難と考えられます.

 一方,

b)ネゲブ原子力研究センター(所在地:ディモナ)
 フランス製のIRR−2(熱出力25MW,天然ウラン・重水減速炉,1963年12月臨界)

では,IAEAの保障措置対象外であること.また,重水減速炉のため濃縮ウランを必要とせず,
(重水炉でも経済性向上のため高燃焼度化を図る場合,濃縮ウランを使用する場合がありますが,これは発電用原子炉の場合であり,希なケースです.<天然ウランですむ重水炉のメリットを否定するような物のため)
 天然ウランを使用しているため,同じディモナにある核燃料加工工場には濃縮プロセスを持たないと考えられます.
 また,こちらはIAEAの保障措置対象外のため,同じディモナにある再処理施設で,IRR−2の使用済核燃料からプルトニウムと回収ウランを取り出すことは可能であり,かつ,それら核物質の転用先はIAEAで把握できないため,核兵器などの軍事転用も十分考えられる状況です.

 以上を考えあわせると,軍事・研究用に小規模な濃縮プロセスを併設する可能性は否定できませんが,ディモナの核燃料加工工場は主にIRR−2用の天然ウランの加工成形工場であり,副産物である劣化ウランを他に転用できるほどの大規模な濃縮プロセスは持っていないと愚考します.

 ウランの焼夷効果などを期待する場合は,ウランの化学的特性に期待している訳で,何も核的な同位体比を変化させる必然性は全くありません.
 そう言う面では手持ち分,もしくは入手可能な物ということで,核的にはもったいない面がありますが,天然ウランや回収ウラン(これは再処理工場を保有している国に特有の事情ですが)を使用する可能性はあり得ます.

 しかし,よく考えれば考えるほど,理解に苦しむニュースですね.
 共同通信社には外電をそのまま伝える役割があるため,そのような専門知識を求めるべくもないのかもしれませんが,「英紙インディペンデント」もそのようなレベルなのでしょうか?

へぼ担当 in mixi支隊

>「英紙インディペンデント」もそのようなレベルなのでしょうか?

 高級紙の筈なんですが・・・.

JSF in mixi支隊

 逆神のところで情報がありました.

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20061028i215.htm
によると,疑惑を持ち出したのは「欧州議会の『環境保護派の主導』で設置された『欧州放射線リスク委員会(ECRR)』」とのこと.
 それでは原子力に対してネガティブと思われる政治的にも,科学的(<能力不足という意味です)にも「組成分析の結果,(原子力発電で一般に使用される)濃縮ウランと見られる.」との見解を出してもおかしくない訳で.
 詳細は「同委員会関係者の初期報告」および今後出されるであろう詳細な報告書及び生データ(特にγ線分析(組成分析))を読まないと判断できませんが,劣化ウラン(もしくは天然ウラン)使用との結論ならともかく,濃縮ウランうんぬんはかなり眉唾物と見るべきと考えます.

へぼ担当 in mixi支隊


 【質問】
 今回の紛争における,イスラエル軍の誤算の原因は?

 【回答】
 司令官の事実上の更迭から推察するに,開戦時の司令官は戦車畑出身で,対ゲリラ戦闘をよく理解していなかったためと思われる.
 また,ゲリラの後方撹乱に遭い,イスラエルの兵站も十分機能せず,IDFの同士討ちも多発したという.
 さらに,対空ミサイルがゲリラ側にあると見られていたため,その攻撃を恐れて,ヘリでの補給や救助もなかったという.

 以下引用.

 8月9日には,対ヒズボラ地上戦の司令官が差し替えられる,ということまで起こりました(注2).正しくは,これまでの司令官(陸軍少将)の上に更に総司令官(陸軍少将.ただし先任者)を据えたのです.

 (注2)こんなことは,エジプト軍の奇襲を受けて,イスラエル軍が敗北の危機に陥った1973年の第四次中東戦争の時以来だ.

 前者の将軍は戦車畑出身であるのに対し,後者の将軍は歩兵畑出身で,しかも,前回の南レバノン進撃・占領時代に南レバノンでの戦闘経験があります.
 これは,戦車といったハイテク兵器が(ヒズボラが強力な対戦車火器を持っていることもあって)ヒズボラ相手の対ゲリラ戦闘では余り役に立たなかったという反省等に基づく,と評されています.
 (以上,特に断っていない限り
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1841102,00.html
(8月10日アクセス)による.)

太田述正コラム#1371(2006.8.10)

 ゲリラの後方撹乱に遭い,イスラエルの兵站も十分機能せず,IDFの同士討ちも多発したという.
 さらに,対空ミサイルがゲリラ側にあると見られていたため,その攻撃を恐れて,ヘリでの補給や救助もなかったという.

 以下引用.

 〔略〕

・失敗の根源
 イスラエルの兵站が十分機能しなかった.水も相手の死んだゲリラの水筒から獲ていた.
 これは,背後でゲリラが兵站の車両を狙い撃ちしたことによりますね.兵站を狙うのはゲリラの基本.兵站が弱いのは,昔も今も同じで,イラン戦争でも当初から兵站のトラックをスンニ派ゲリラは狙っていた.

 ゲリラに背後から撃たれるために,敵と味方の区別ができずに,イスラエル軍の同士討ちも多発したようである.通信等での連絡ができないレベルであり,イスラエル軍の最新のインターネット機能が,この歩兵小隊にはなかったようですね.
 アラブへの必勝神話が蔓延り,歩兵の訓練も十分にされていないし,装備も貧弱であったと.

 このような理由で,成果もなしに,イスラエル軍は撤退した.ゲリラ側は,精巧な武器を持ち,かつ戦術も優れていたし,イスラエル軍の軍服を着ている者もいたと.

 そして,ゲリラからの攻撃を恐れて,ヘリでの補給や救助もなかった.対空ミサイルがゲリラ側にあるとイスラエル軍は見ていたのですね.
 このため,ヘリが十分活用できなかったようである.
 航空機はフレアなどの対空ミサイル回避の手段があるが,ヘリは遅いために回避が難しい.

 しかし,今までの失敗を克服してイスラエル軍は,再起を喫して,再度レバノンに侵攻すると言う.

 〔略〕

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Israeli Troops Criticize Army, Equipment
Aug 18, 6:06 PM (ET)
By BENJAMIN HARVEY

METULLA, Israel (AP) - Israeli soldiers returning from the war in Lebanon say the army was slow to rescue wounded comrades and suffered from a lack of supplies so dire that they had to drink water from the canteens of dead Hezbollah guerrillas.

"We fought for nothing. We cleared houses that will be reoccupied in no time," said Ilia Marshak, a 22-year-old infantryman who spent a week in Lebanon.

Marshak said his unit was hindered by a lack of information, poor training and untested equipment.
In one instance, Israeli troops occupying two houses inadvertently
fired at each other because of poor communication between their commanders.
"We almost killed each other," he said. "We shot like blind people. ... We shot sheep and goats."

In a nation mythologized for decisive military victories over Arab foes, the stalemate after a 34-day war in Lebanon has surprised many.

The war was widely seen in Israel as a just response to a July 12 cross-border attack in which Hezbollah gunmen killed three Israeli soldiers and captured two. But the wartime solidarity crumbled after Israel agreed to pull its army from south Lebanon without crushing Hezbollah or rescuing the captured soldiers.

A total of 118 Israeli soldiers were killed in the fighting, and the army was often caught off guard by a well-trained guerrilla force backed by Iran and Syria that used sophisticated weapons and tactics.
Soldiers, for instance, complained that Hezbollah fighters sometimes disguised themselves in Israeli uniforms.

Military experts and commentators have criticized the army for relying too heavily on air power and delaying the start of ground action for too long. They say the army underestimated
Hezbollah, and that Prime Minister Ehud Olmert set an unrealistic goal by pledging to destroy the guerrilla group.

This week, Israeli Defense Minister Amir Peretz appointed a former army chief to investigate the military's handling of the war.

Some of the harshest criticism has come from reservists, who form the backbone of the army.
Israeli men do three years of mandatory service beginning at age 18, but continue to do reserve duty several weeks a year into their 40s.

Israeli newspapers quoted disgruntled reservists as saying they had no provisions in Lebanon, were sent into battle with outdated or faulty equipment and insufficient supplies, and received little or no training.

"I personally haven't thrown a grenade in 15 years, and I thought I'd get a chance to do so before going north," an unidentified reservist in an elite infantry brigade was quoted as telling the Maariv daily.

Israel's largest paper, Yediot Ahronot, quoted one soldier as saying thirsty troops threw chlorine tablets into filthy water in sheep and cow troughs.
Another said his unit took canteens from dead guerrillas.

"When you're thirsty and have to keep fighting, you don't think a lot, and there is no time to feel disgusted," the unidentified soldier was quoted as saying.

The newspaper said helicopters were hindered from delivering food supplies or carrying out rescue operations because commanders feared the aircraft would be shot down.
In some cases, soldiers bled to death because they were not rescued in time, Yediot Ahronot said.

The Israeli military said it was aware of the complaints, had tried to address them in the course of the fighting and was still looking into them. It had no comment on specific complaints.

Comrades of the two soldiers captured by Hezbollah sent a petition to the prime minister Thursday accusing the government of abandoning the men.

"We went to reserve duty with the certainty that all of Israel's citizens, and the Israeli government, believe in the same value that every combatant learns from his first day in basic training - you don't leave friends behind," the soldiers wrote.
"This is a moral low point. The Israeli government has abandoned two IDF (Israeli Defense Force) combatants that it sent on a mission."

The petition was being circulated Friday; it was unclear how many soldiers had signed it.

While such sentiments aren't shared by all soldiers, even some senior commanders acknowledge the army came up short in Lebanon.

When soldier Gil Ovadia returned home, his commander made no mention of victory in an address to their battalion. Instead, the commander told them the war was over, said they did a good job, and advised that they be prepared to come back soon and fight again.

"We'll be back in Lebanon in a few months, maybe years,"
Ovadia said.
http://apnews.myway.com/article/20060818/D8JJ3JL81.html

 〔略〕

ライブドア・ニュース 金子登記者

 さらにまた,帰還したイスラエルの予備役兵からは,
「空軍による水や食料の補給は不足し,『兵士は脱水症状のまま負傷兵救出のため何キロも歩かねばならなかった』」
「配布された現地の空撮図が4年前のもので役に立たないなど,情報の不足」
「『臆病(おくびょう)な』指揮決定者の『優柔不断な態度』により『作戦が頻繁に変更され,明確な目的なしに敵の領土に長期間とどまるはめになった』」
エルサレム特派員,海保真人 in 毎日新聞,2006年8月21日21時23分
といった点も指摘されているという.

http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei060825_2.htm
では,中東の軍事専門家は今回のレバノン危機時におけるイスラエルの失敗を,次の6点に要約している.

 (1)オルメルト首相,ペレツ国防相が何れも戦争を管理・運営する上で求められる軍事経験と技量を欠いていたこと.

 (2)空軍出身のハルツ参謀総長の力量にも,出身母体の特性から疑問がつけられること.

 (3)シャロン前首相が在任中に軍・モサド・軍諜報機関の上層部の人事を,それぞれの専門性ではなく,自らの政治哲学に沿う人物で埋めていたこと.

 (4)イスラエル軍が6年間に亘るパレスチナ・テロとの戦いの過程で,小火器類を持つテロ組織を抑制する戦術に特化し,戦争遂行能力を持つテロ組織への対応法に十分取り組んでいなかったこと.

 (5)イスラエル軍の戦略家がテロとの戦いに際して,米軍がイラクで犯したのと同じ過ち,つまり空軍力・圧倒的な砲撃力・ハイテク武器類への過度の依存に陥っていたこと.

 (6)ヒズボラ及びその指導に当たったイラン革命防衛隊が,西岸の全都市がイスラエル軍の手中に陥ってしまった2002年のイスラエル軍の対パレスチナ作戦である「防御壁作戦」を徹底研究し,これを下敷きとした作戦を練り上げていた点に気づかなかったこと.

 情実人事と,情報不足と,上層部部の無能という3点セット.しかも,シャロン前首相の責任問題にも飛び火しそうな勢いとは…….
 ところで,この3点セット,どこかで聞き覚えがあるような…….

 最後に,善悪論ではないが,今回のイスラエル軍には,とても現代戦とは思えないほど広報という視点も欠落してた.
 海外サイト巡りをしてたら,侵攻初期段階に較べてどんどんイスラエルの心象が悪化していってるのがよく分かる.
 もはやアラブの英雄と化したヒズボラ解体など,夢のまた夢.

軍事板

撤退するIDF


 【質問】
 空爆に頼りすぎ,地上兵力の投入が遅れ気味で,しかも小出しであったことは,IDFのミスではないのか?

 【回答】
 太田述正によれば,必ずしもそうではなく,ヒズボラのロケット段攻撃による犠牲者が,予想より大幅に少なかったので,当初の地上部隊大規模侵攻の予定を変え,空爆中心のものに切り替えたのだという.

 〔略〕
 北方戦域での戦いが始まってから,直ちに指摘され(ワシントン・ポスト.7月19日アクセス),しかも停戦に至ってもなお,最も声高に指摘されたのは,イスラエルが空爆に頼りすぎ,地上兵力の投入が遅れ気味でしかも小出しであったこと,そしてこれに関連して,リタニ川付近に空挺降下ないしヘリ輸送で地上兵力を運び,この兵力と国境を越えて北上する兵力によるヒズボラ挟み撃ち(pincer)作戦を行わなかったこと(ロサンゼルス・タイムス.8月14日アクセス)であることはご存じの方が多いでしょう.
 まことしやかに,これは,たまたまイスラエル軍参謀総長に,史上初めて空軍出身者が就いていたからだ,という「分析」がなされたりした(ロサンゼルス・タイムス.8月17日アクセス)ものです.
 実際,イスラエルは最終局面で,3万人も地上部隊を投入して挟み撃ち作戦を開始したものの,多数の兵士の死傷者を出しつつも,時間切れで中途半端な形で停戦になってしまった観がある(ワシントン・ポスト.8月20日アクセス)だけに,上記指摘は正しいように見えます.

 しかし,遺憾ながらこの指摘は的はずれです.

 前にも申し上げたように,イスラエルは,何年もかけてヒズボラ壊滅軍事作戦計画を練り上げてきており,それは4万5,000人もの地上兵力を使って上記挟み撃ち作戦を中心とする作戦計画だったのですが,ヒズボラによるロケット攻撃による死者が一日1〜2人と予期していたより大幅に少なかったため,予定を変えて,空爆中心の作戦に切り替えたのです.
 このようにロケット攻撃のイスラエル一般住民殺傷効果が低かったのは,ヒズボラがイスラエルからの砲爆撃を警戒して,ロケットを徹底的に各所に分散配置したため,イスラエル領内の特定の目標に向けてロケットを一斉発射させることができなかったためです.
 このため,ロケット攻撃による死者の数は,北部戦域での一ヶ月間全体で,わずかに1回の自爆テロ攻撃による死者の数並にしかなりませんでした.
 これでは,数百人の兵士の死が見込まれる本格的な挟み撃ち作戦を実施に移すわけにはいかない,とイスラエル政府は考えたのです.
 しかも,これだけの犠牲を払ったとしても,ヒズボラ兵士は一般住民でもあることから,ヒズボラ兵力を全滅させることは不可能であることを考えれば,なおさらだったのです.(以上,台北タイムス,8月30日アクセス)

 では,停戦直前の最後の駆け込み的挟み撃ち作戦は何のためだったのでしょうか?

 軍事的には全く意味がないけれど,イスラエル軍が部分的にはリタニ川まで達したという対国際世論的視覚効果をねらったものであり,停戦後にリタニ川以南の地域に国連平和維持部隊が展開することを国際世論に当然視させるためのものであったと私は考えています.
 〔略〕

太田述正コラム#1392(2006.8.30)

 ただし,オルメルト首相ないしIDF幹部が,そのような作戦変更を行ったとする報道は,寡聞にして知らない.
 また,ロケット弾攻撃をやめさせることが目標ではなかったのか?という疑問もある.

 いずれにせよ,本紛争に関する戦術的・戦略的評価は,かなり長く議論の的となるだろう.

消印所沢

 ただ,当初に投入した部隊の数が少なく,8/11になってやっと内閣の承認を得て3個師団を投入したのは確かみたいですね.
 紛争勃発前の演習では,まず一週間にわたって爆撃・砲撃を行った後で,一挙に3個師団を投入するという内容だったそうですが,実際にはそうならなかった,と.

 ソースはJDW 2006/8/23,"Israel introspective after Lebanon offensive"

井上@Kojii.net in mixi支隊


 【質問】
 ということは,国防軍の計画が承認されず,やむなく少数投入になった,というのが,事実に近いのですかね?

消印所沢 in mixi支隊

 【回答】
 JDWの当該記事ではそこまで書いていないのですが,何かの事情があって当初の構想通りにいかず,そこから誤算の連鎖が始まったのは確かじゃないかと.

 すでにFAQに上がっている「ロケット攻撃の犠牲者が少なくて云々」というのも一理あって,特に長射程ロケットについてはかなり高い確率で潰している(とIDFはみなしている)らしいのですね.
 当該記事によると,ヒズボラがレバノン国内側に構築していた陣地,ロケット発射器の隠蔽策,ヒズボラ幹部の所在に関する情報など,敵方に対する情報が不足していた,という批判が出ているわけです.

 そのことと,過去に国境地帯で小競り合いしたときにはそれなりにIDF優位な結果に終わることが多かったことから考えると,過去の経験や情報不足のせいで,ヒズボラの能力・戦力を
「思ったより大したことないんじゃねーの?」
と下算したんじゃないか,というのが個人的な見方です.

 ついでに個人的な考えを付け加えると,プロパガンダ的に絶対不利な全面戦争を仕掛けるんじゃなくて,工作員を送り込んでヒズボラの幹部を暗殺する手もあったんじゃないかなあと.
 イスラエルはそもそも,そういう手が得意じゃないですか.

井上@Kojii.net in mixi支隊


 【珍説】
 実験段階の米軍残虐兵器DIMEを,イスラエル軍が使用した疑いが濃厚!

浅田信幸 in 赤旗,2006/10/14

 【事実】
 DIMEが残虐兵器だって?

 昨年11月頃から始まった一連の白リン弾騒動のキッカケとなった,イタリア国営放送RAIがまた新型残虐兵器を創造したみたいです.日本では早速,しんぶん赤旗が同調してニュースにしています.(他マスコミは反応無し)

 ところでこの謎の兵器・・・以前,「超兵器警報発令!」で話題になった兵器の,真の正体かもしれません.

実験段階の米軍残虐兵器 イスラエル軍が使用か ガザで7月発覚 伊国営放送報道
[2006/10/14 しんぶん赤旗]

 【パリ=浅田信幸】イスラエル軍がレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラと戦火を交えていた時期に,同軍がパレスチナのガザ地区で,実験段階にある米国製の新兵器DIMEを使用した疑いが濃厚になっています.〔略〕

 RAIによる調査は七月半ば,ガザの病院医師の訴えから始まりました.
 少なくとも六十二例で,足が切断された状態で病院に運び込まれるという,これまでの兵器からは「説明のつかない」傷害が発端でした.
 シュハダ・アルアクサ病院のワヒド医師は,足の切断が「まるでのこぎりで切ったように骨まで切断されていた」と語っています.
 切断された部分はやけどの跡があり,生存者の場合は病院に運び込まれた時点で出血していませんでした.
 まるで被害現場から病院までの三十分足らずの間に出血が止まるよう工夫された兵器のようだとも指摘しています.

 もう一つ医師たちを不思議がらせたのは,切断部分から金属片が見つからなかったこと.傷害部位から摘出されたのは,粉末状の塊でした.
 化学的検査を実施した北イタリアのフェラーラ大学のバカロ博士は,この粉末状物質が「非常に高密度な炭素」であることを突き止め,合わせてタングステンなどの物質を検出しました.
 これが米空軍の兵器開発ホームページに紹介されている実験段階のDIMEと呼ばれる新兵器ではないかとの疑いを強めました.

 DIMEは破壊力を強める一方,爆発の被害をせいぜい数メートルの範囲にとどめるために工夫された兵器です.
 残虐兵器使用の疑惑は人道支援団体などが提起してきました.イスラエルは「国際条約で禁じられた兵器は使用していない」と主張しています.

 アメリカで開発中の新兵器がイスラエル軍の手に渡り,ガザに投入されたという話は・・・まぁ,可能性としては無くはないです.
 ですが,仮にその兵器がDIMEだとして,なぜ残虐兵器呼ばわりされないといけないのでしょうか.
 『爆発の被害をせいぜい数メートルの範囲にとどめるために工夫された兵器』とは,むしろ爆発時に周囲を巻き込む付随被害を極小に抑える為の人道的兵器なのではないでしょうか.

 例えば以前に,燃料気化爆弾の事を批判する人達がいました.
 燃料気化爆弾とは爆圧そのものは通常爆弾よりも弱いのですが,非常に広い爆風範囲を得ている兵器です.
 つまり,赤旗の説明によるDIMEとは性格が逆の兵器です.
 爆風の被害範囲が広くても駄目,狭くても駄目とは・・・一体,どんな兵器なら使って良いのですか?

 そこで早速,前回の白リン弾騒動の時にもいち早く特集記事を組んで馬鹿げた騒動の終息に貢献した Globalsecurity.org が,今回も同じようにDIMEの特集記事を組んでいます.

Dense Inert Metal Explosive (DIME) [globalsecurity.org]

The Air Force is demonstrating a low collateral damage warhead, allowing a "behind-the-wall" threat prosecution with a highly localized lethal footprint. The warhead case consists of a low-density, wrapped carbon-fiber/epoxy matrix integrated with a steel nose and base. The low-density composite case can survive penetration into a one-foot hardened concrete wall. Upon detonation, the carbon-fiber warhead case disintegrates into small non-lethal fibers with little or no metallic fragments, thus significantly reducing collateral damage to people and structures. The warhead explosive fill is a dense inert metal explosive containing fine tungsten particles to provide a ballasted payload with sufficient penetration mass. The tungsten displaces energetic material so as to reduce the total energetic used. The net results are higher dynamic energy impulse all within a small lethal footprint.

 どうやらDIMEとは,炭素繊維の弾殻にタングステン粉末を含んだ爆薬のようです.
 炭素繊維の弾殻は爆風で粉微塵になり,通常爆弾のような鉄の破片を撒き散らしません.
(爆弾の殺傷範囲はこの破片で決まる.破片が無い場合の殺傷範囲は爆風効果に依存し,範囲は破片効果よりもかなり狭くなる)
 DIMEに装填された重金属であるタングステンの粉は,爆風効果だけではあまりにも殺傷範囲が狭くなる事をカバーする為のものではないか,と思います.
 破片に比べ粒子状の金属粉は飛び散ってもすぐに勢いが無くなり,ある程度まとまった量でないと打撃力にはなりません.つまり極近距離でしか効果を発揮できないのでしょう.
(私の理解が足りないかもしれません,もう少し調べてみます)
 なぜタングステンなのかというと,比重が重いこともさることながら,他の金属・・・例えば鉄の粉では燃えて無くなってしまうからです.

 そして開発目的はやはり,付随被害を抑える為でした.

「The AFRL's Munitions Directorate dense inert metal explosive (DIME) concept team successfully demonstrated an effective mechanism to reduce collateral damage, helping the warfighter to prevent the loss of public support and more importantly, the loss of innocent life.」

 イスラエル軍は以前からこの手の余計な被害を与えない兵器に熱心で,レーザー誘導爆弾から爆薬を取り除き,コンクリートを詰めた「コンクリート爆弾」なる物を以前から使用しています.
 これは建物の窓すら狙える精密誘導弾ならば,弾体の直撃だけで任務を達成できる場合があり,これならば爆発せずに付随被害を無くすことができるというものです.

 しかし,場合よってはコンクリート爆弾では任務遂行が難しい局面もあります.
 かといって通常の爆薬が装填された爆弾では,周囲を巻き込む恐れがある・・・そういった時に,このDIMEのような特殊爆薬が使えると便利なのでしょう.
 爆薬の性格上,多用される兵器ではありません.タングステン自体も高価ですし.
 タングステンは鉛よりも化学毒性が低いとはいえ,やはり重金属である以上,健康にはあまりよくないです.
 しかし,よほど大量に集中使用されない限りは大丈夫でしょう.
 そもそもこれを心配するくらいなら,戦場で遥かに大量に使用されている銃弾の弾(鉛製)の毒性を心配すべきです.
 なお,どう解釈してもDIMEは国際法で禁止された兵器には該当しそうにありません.

 ・・・しかし,そもそもガザで使用された兵器は本当にDIMEなんでしょうか? もう少し検証が必要だと思います.

週刊オブイェクト,2006/10/15


 【質問】
 イスラエル軍の将軍の弁が聞きたいんだけど.

 【回答】
 それでは,特殊部隊を管轄するイスラエル国防軍の参謀総長にインタビューです.

Q.まず最初に一言
A.どんなもんじゃーい!
Q.暗殺作戦失敗という事態を招いてしまった心境は?
A.まだ実感ないな.
Q.なぜ,8月19日を選んだのか?
A.停戦やぶって攻撃したときは,『よっしゃー』って思ったヤツも多かったやろ.
でもな,それはオレ流のサプライズや
Q.ヒズボラの検問所に気付かなかったか?
A.人それぞれ,いろんな見方があるからな.
Q.過去にも同様の事件を起こしているが?
A.いい経験になった.再戦? 何度やっても(ヒズボラに)勝つ.

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